□五十年戦争the 50 year war
 イヴァリース(畏国)とオルダリーア(鴎国)の間で約50年間にわたって繰り広げられた戦乱を「五十年戦争」と呼んでいる。
 五十年戦争の起こりは、鴎国国王ディワンヌ3世が世継ぎを残さずに亡くなったことに始まる。王位は3世の従弟にあたるヴァロワ6世が継ぐが3世の叔父にあたる畏国国王デナムンダ2世がそれに不満を持ち宣戦を布告した。
 これは口実に過ぎず、真の狙いは国境に面した鴎国領土ゼラモニアへの侵略であった。そもそもゼラモニアは独立国家であったが獅子戦争の一世紀ほど前に鴎国の侵略によって併合されたという歴史を持っている。畏国は鴎国の弱体化のために援助していたが、結果的には失敗。しかし、ゼラモニアの貴族や諸都市らが鴎国支配に不満を持っており、再度、畏国に介入を求めたのが真相であった。
 緒戦に勝利した畏国軍はそのまま鴎国の首都ブラへ進軍するが、その途中デナムンダ2世が病に倒れそのまま帰らぬ人となってしまうという事件が発生。わずかな畏国側の混乱は鴎国軍に態勢を立て直す絶好の機会を与え、ヴァロワ6世は畏国軍をゼラモニアまで追い返すことに成功した。その後、約2年に渡り膠着状態が続いたが、その均衡を破ったのはロマンダ軍の侵攻であった。
■五十年戦争中期
 ロマンダ国(呂国)はラーナ海峡を挟んで畏国の背後に位置する強大な軍事国家で、血縁関係のあったヴァロワ6世の要請に応じて畏国へ進軍したのである。しかし、デナムンダ2世の後を継いだデナムンダ4世は勇猛果敢な戦士であり、自ら騎士団を率いて呂国・鴎国の両軍を相手に健闘した。この時、ラーナ海峡を挟んで呂国の反対側に位置する場所にジークデン砦を建設し侵攻に備えたとされている。
 呂国は黒死病が大流行したこともありわずか3年で呂国軍は撤退することになる。
 呂国との戦いでは、ガリランド王立魔法院が輩出した魔道士エリディブスが多くの黒魔法や召喚魔法を古文書の中から発掘し畏国の勝利のために役立て英雄と称えられた。しかしリオファネス城奪還の最中に行方不明となっている。また特に戦功をあげたのが天騎士バルバネス率いる北天騎士団と雷神シド率いる南天騎士団であった。北天騎士団に所属するバルバネスの息子士ザルバッグも幾多の戦いで勝利を収め、デナムンダ4世に“イヴァリースの守護神はガリオンヌにあり。ベオルブの名の下にこそ勝利がある”と絶賛された。この北天・南天両騎士団を従えたのはベストラルダ・ラーグ公、ダクスマルダ・ゴルターナ公で将軍としてそれぞれ活躍した。両騎士団は幾多の戦いで勝利を収め鴎国への進軍を試みる。しかし、長引く戦乱は両国の内政を悪化させていた。
 各地で農民一揆や反乱が相次ぎ、両国はそれぞれの戦力を国内へと向ける必要があったのである。これにより、再び膠着状態を迎えることになる。
■五十年戦争末期
 事態が急変したのは、やはりデナムンダ4世の病死であった(これについては暗殺ともいわれている)。跡を継いだオムドリア3世はおよそ国王に不向きな人柄で、国政を重臣や王妃に任せる有り様であった。
 そのため、ゼラモニアに駐留する畏国軍を一掃し、畏国へ進軍するヴァロワ6世の跡を継いだラナード王子を止める力はすでになかったのである。五十年戦争末期には
戦力不足を解決するため、平民の中から義勇兵を募りウィーグラフを団長とする骸騎士団が結成されたりしている。
 ゼルテニアへの侵入を許した畏国は(北天騎士団や南天騎士団の奮闘があったものの)、和平への道を模索し始める。結局、両国はこれ以上の争いは無益なものと判断し、残された力を内政に振り分けるために和平協定を結ぶことになった。対等とはいえ、実際は畏国側の降伏であり、事実上の敗北であった。鴎国との間で対等な和平条約を締結できたのは他騎士団が連敗している中、幾多の戦いで勝利を収め、その都度畏国の劣勢を覆した北天騎士団の元団長バルバネスの存在を恐れ鴎国側が譲歩したためといわれている。バルバネスは戦争末期、2年の闘病の末、病死。実際は息子であるダイスダーグによる毒殺だった。その後遺言に従ってダイスダーグは騎士団長座を弟ザルバッグに譲り、主君・ラーグ公の軍師となった。
 この後、畏国の経済は近隣諸国に対する戦争借款(しゃっかん)の返済や勝利国に対する賠償金の支払に追われ破産寸前となった。そのため帰還してきた職業軍人たちの働きに対する報奨金などなく、それどころか騎士団ごと解雇するという事態を発生させることになる。骸騎士団などは存在意義を無くし、何の報奨も与えられず解散させられた。
 その結果、大量の失業者を抱える畏国には、王家や貴族に対する不満と不信感という空気が漂うことになった。また五十年戦争によりミュロンド・グレバドス教会の支配力が更に低下。支配力の復活と国王以上の権力を取り戻そうとしてその後勃発した獅子戦争を裏から操る黒幕となる。
□五十年戦争関連事項
■サダルファス家
 五十年戦争で没落。アルガスの祖父が敵軍に捕まり、仲間を敵に売って助かろうとしたが騎士見習いに殺害されたという噂が流れたため。
■エルムドア侯爵
 五十年戦争後半畏国に侵入する鴎国軍を相手に勇猛果敢に戦った。白銀の鎧に長く美しい銀髪を風になびかせ戦ったことから、味方からは“銀の貴公子”と慕われ、敵兵からは“銀髪鬼”と恐れられた。
■バリンテン大公
 フォボハムの領主。武人ではないため五十年戦争で前線に立つことはなかったが大公の下にある様々な国から集められた傭兵部隊が大公の名代として活躍。五十年戦争末期、ガルテナーハ一族に伝わる一子相伝の秘術『天道術』『天冥術』を手に入れるため、協力を要請するが長老に拒否された為村の焼き討ちを行う。偶然に戦争孤児の中に秘術を受け継いだラファ・マラークを発見、暗殺者として育てていた。
■ガフガリオン
 東天騎士団の分隊長として活躍したが、勝利のために手段と方法を選ばぬ残忍な戦い方をとったことから終戦後、騎士団から追放された。
■オーランの実父
 シドの戦友で五十年戦争末期戦場で死亡。息子オーランはオルランドゥ伯の養子となる。
■ドラクロワ枢機卿
 五十年戦争で名を馳せた騎士にして神学者。五十年戦争で妻子を鴎国の異教徒に殺されて以来、異端審問官として異端者狩りに力を注ぐ。戦争末期、ゼラモニアの古城で聖石を発見したとされる。
■千騎長ダーラボン
 五十年戦争で一度だけ参謀として遠征に参加するも実戦経験はほとんどない。
■黒の15騎士
 五十年戦争中期には強盗や殺人が続発。そのためザーギドス自治体では各地の戦場で名を馳せた兵士を雇い、独自の民間兵士警備団『黒の15騎士』を形成した。この警備団は悪魔の渓谷で盗賊団の罠にかかり全滅。民間で組織された警備団の為その存在は歴史には残っていない。
■ベスラ要塞
 五十年戦争で最前線基地として使われた。
■ディープダンジョン
 五十年戦争で一部破損した灯台。
■ネルベスカ神殿
 五十年戦争でゲリラの拠点として用いられた。
■ツィゴリス湿原
 五十年戦争の際、多くの人命が失われ、広大な毒沼と化した湿原。
■ランベリー城
 五十年戦争の傷跡が残る。

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