□デュライ白書・ブレイブストーリー
 獅子戦争終結後、オーラン・デュライは自分が見聞きした出来事を五年もの歳月をかけてまとめあげた。
 執筆された『デュライ白書』は翌年新たな教皇を選出するクレメンス公会議の場で公開されるが真相の暴露を恐れたグレバドス教会はその場でオーランを逮捕すると“異端者”として火刑に処したという…
 その後、回収された『デュライ白書』は、長い間教会の手により隠匿されることになる…
 オーダリア大陸南西に存在したイヴァリース国で勃発した獅子戦争より400年後、教会によって『デュライ白書』が公開される。『デュライ白書』では、当時騎士達の棟梁として名高い名門ベオルブ家の末弟ラムザ・ベオルブが真の英雄とされているが、教会はこの若者こそが神を冒涜し、国家の秩序を乱した元凶と主張した。
 イヴァリース中世史を専門とする歴史学者アラズラム・J・デュライは、『獅子戦争の謎』『聖アジョラの実像に迫る』『デュライ白書・400年目の真実』、そして『ブレイブストーリー』などを著して『デュライ白書』の解釈をめぐってグレバドス教会ミュロンド派と激しく対立。
■Chapter1 The Meager持たざる者
 五十年戦争末期に即位したオムドリア3世は病弱であることから政務を執ることはなく、ほとんど全てをルーヴェリア王妃に委ねていた。しかし、彼女の傲慢で横柄な態度が元老院や議会との対立を深め、戦後処理もままならなぬ執政に民心も王家から離れていった。戦後多大な負債を抱えた王国は、街に失業や解雇された職業軍人を溢れさせる。これを救済する意志も手段も持たない貴族階級に対して、民衆は反感を募らせる。
 オリナス王子の誕生会の席で国王オムドリア3世が倒れた。国政の大半は王妃のルーヴェリアを中心とした重臣たちが担当しており、大きな混乱はなかったが、ルーヴェリアの身勝手な政治によって不満が高まっていった。獅子戦争勃発の一年前、ガリオンヌ地方で大きな勢力となっていたのが骸旅団と呼ばれる盗賊集団。五十年戦争末期、戦力不足を解決するため、平民の中から義勇兵を募り結成され活躍したが、敗北によってなんの報償も与えられずに解散させられた骸騎士団を前身としている。貴族などの支配者階級の圧政に苦しむ民を解放するため各地で要人誘拐や暗殺などのテロ活動を行う反貴族を掲げた元団長ウィ―グラフをリーダーとして骸旅団は活動していた。
 骸旅団せん滅作戦が北天騎士団を中心とし、イグーロス城に駐留するラーグ公の近衛騎士団なども含めた四騎士団の共同作戦が計画され、ガリランド王立士官アカデミー卒業間近の士官候補生たちが集められ、士官候補生たちにその後方支援を担当させた。後の英雄王ディリータ・ハイラルの名が初めて歴史に登場した出来事である。またこの作戦には当時騎士達の棟梁として名高い名門ベオルブ家の末弟ラムザ・ベオルブも参加していた。
 非公式でランベリーの領主・エルムドア侯爵がイグーロスに向かう途中、マンダリア平原で骸旅団のサブリーダー・ギュスタヴらの襲撃にあい、身代金目的で誘拐される。甘言によって革命に疲弊したギュスタヴに誘拐を実行させたのはダイスダークであり、そのことをラーグ公も承知していた。国王の死期が近いと思われることからその後のラーグ公とゴルターナ公との権力争いを睨み、敵となるかもわからぬエルムドアを殺害しようとしたのだった。
 エルムドア侯爵誘拐は、骸旅団せん滅作戦に参加していた士官候補生達が、侯爵の近衛騎士団の生き残りであるアルガス・シドルファスを救出したことにより発覚、ダイスダーク卿に報告される。そこで士官候補生達はガリランド警備を命令されるが、侯爵救出に向かう。侯爵が捕まっている“砂ネズミの穴ぐら”の襲撃に成功。侯爵誘拐を阻止しようとするウィーグラフによってギュスタヴは殺害され、侯爵は無事救出されたもののウィーグラフは取り逃がしてしまう。ダイスダーグが計画したエルムドア侯爵殺害は失敗した。しかし誘拐自体がガリオンヌ領で行われてしまったため、計画変更は避けられず、ラムザらが命を救ったことが結果的にラーグ公側を有利な立場したという。
 その頃、オムドリアV世の容体が急変。しかも王子の後見人は未だ定まっておらず、国王亡き後、その後見人をめぐり王妃派と元老院の間で衝突が起きることは避けようがない状態となっていた。
 作戦によって骸旅団は壊滅状態。捕らえた盗賊は約七百名、死亡者は約三千人にも上った。
 しかし頭目のウィーグラフを捕らえることはできず、北天騎士団は残党狩りに精力を費やしているが、そんな中、成都イグーロスで残党による要人襲撃事件が起こった。襲撃されたのは名門と名高いベオルブ家の邸宅。ラーグ公の側近、ダイスダーグ卿を暗殺することが目的だったらしい。暗殺は未遂に終わった。しかしティータが人質にとられた。
 ジークデン砦に骸旅団の残党が逃げ込み、ティータを人質にしたゴラグロスはアルガスによって殺害され、ティータもまた命を失う。妹を殺されたディリータは、アルガスを討ち取ることに成功。しかし、ゴラグロスが引火させた爆薬によって爆発が始まり、砦は崩壊しディリータは行方不明となる。ラムザ・ベオルブはこの事件をきっかけとしてベオルブ家を離れ傭兵となった。
 国王オムドリア3世亡き後、王妃ルーヴェリアによる政治の私物化が進んでいく。自分の方針に異を唱える議員は容赦なくその地位を剥奪された。それが元老院の議員であっても同様。王妃に対してその態度を正面から批判していた王太后はブナハンへの蟄居を命ぜられ、そのまま帰らぬ人となった。毒殺されたとの噂もあるが定かではない。
 ゴルターナ公の所領地、ゼルテニアで大規模な農民一揆が発生した。原因は昨年の干ばつによる農作物に対する被害が予想以上に大きかったことと、五十年戦争以後、どんどん高くなる税金に対する不満が一気に吹き出したものといえる。一揆の裏には“亮目団”と呼ばれる元騎士団が関与しているようで、鎮圧にあたっているグリムス男爵配下の黒羊騎士団は苦戦を強いられていた。
 これらの反乱は、教会が王家や貴族に対して不満を抱く者達を煽り各地で反乱を起こさせることで両陣営の国政を悪化させ、所領地で起きた反乱の粛正に兵を割くことができない両陣営が膠着状態を打破する為、早期に決着をつけるよう先導しようとしたのである。
■Chapter2 利用する者される者The Manipulator & The Subservient
 ジークデン砦の悲劇より約1年、畏国の覇権をめぐり、王妃の実兄であるラーグ公と亡き国王の従弟にあたるゴルターナ公の間で激しい政治闘争が繰り広げられていた。二人が狙っているのはオリナス王子の後見人、つまり摂政の座である。王妃はラーグ公を推しているが、王妃に反発する議会や貴族の多くはゴルターナ公の支持にまわっていたようだ。ゴルターナ公が正式に摂政に任命されるいう見方が強かった。
 そんな中、来るべき戦争を避けるため修道院で暮らしていた王女オヴェリアをガリオンヌへ移送する計画が密かに進行していた。実は、ラーグ公はゴルターナ軍を装わせた王女誘拐を画策。ゴルターナ公を失脚させると同時に、王位の第二位継承者である王女の暗殺を狙ったものである。ガフガリオン達傭兵の任務も無事誘拐させることで誘拐したものは口封じの為に殺害される予定だった。しかし教会側に情報が漏れてしまったらしく、教会はラーグ公とゴルターナ公を争わせるきっかけを作るために本物の実行犯たちを殺害、南天騎士団を装いディリータに王女を奪わせる。傭兵としてガフガリオンに従っていたラムザの妨害によってラーグ公の狂言誘拐・ディリータによる王女連れ去り共に失敗。ラムザ達は王女と共に教会の庇護を求め、ライオネルの領主ドラクロワ枢機卿のもとへ向かう。
 ダイスダーグ達はただちに一行を捕らえ王女以下全員を抹殺するよう、ガフガリオンに再度命令する。
 ディリータによる王女連れ去りは失敗したものの、連れ去った騎士の一団が黒獅子の紋章を付けていたという目撃者によってゴルターナ公配下の南天騎士団による犯行が疑われることになる。ゴルターナ公は疑いを晴らすために捜索隊を編成したがゼルテニア領での反乱鎮圧のために戦力を割くことが困難だった。

 機工都市ゴーグの地下で聖石『ゾディアックストーン』が発掘された。ドラクロワ枢機卿はバート商会を裏で操りゴーグの聖石奪取を画策。聖石の力を悪用されることを恐れたムスタディオの父・機工士ベスロディオは、安全な場所に隠すよう聖石を息子に託し、バート商会に囚われる。
 ラムザ達はライオネル城へ向かう途中城塞都市ザランダでバート商会の追撃を受けていた機工士ムスタディオを救出。囚われた父を案ずる若き機工士は、枢機卿の画策を知らないためラムザらに同行。
 ライオネル城に居を構えるドラクロワ枢機卿はオヴェリアらを迎え入れ、ラーグ公の謀略を教皇へ報告することを約束する。枢機卿は古より畏国に伝わる伝説の聖石『ゾディアックストーン』を示す。王女たちに別れを告げ、ラムザはゴーグへと向かう。しかし、そこではバード商会の手の者にベスロディオを人質にとられていた。ムスタディオの機転により、聖石を敵の手に渡すことなくベスロディオの救出に成功するも、枢機卿が黒幕であることを知ったラムザらはオヴェリアとアグリアスを救うため、聖石を携えライオネル城へ。
 ダイスダーグとドラクロワ枢機卿は王女と聖石を手中にするための密約を交わしていた。ダイスダーグより遣わされたガフガリオンは、オヴェリアを囮にして聖石の奪取と王女誘拐の真相を知るラムザらの抹殺を目論む。
 一方、任務遂行に失敗したバート商会ルードヴィッヒには枢機卿の制裁が下される。
 ライオネル城の一室に閉じ込められたオヴェリアはディリータと再会する。ドラクロワ枢機卿と通じていたディリータをなじるオヴェリアの前に、枢機卿と騎士らしき男が現れた。抵抗を続けるオヴェリアに、神殿騎士ヴォルマルフは驚くべき事実を告げる。
 本当のオヴェリアは既に亡くなっており、今のオヴェリアはルーヴェリア王妃をよく思わぬ元老院がいつの日か王位を継がせるための身代わりであると。
 上の二人の王子を病死に見せかけて暗殺し、オヴェリアを王家に入れた。病弱なオムドリアに新たな王子ができないと考え、自動的に王位はオヴェリアのものとなるはずだった。しかしオリナス王子が誕生した。(王子がオムドリアの子であるかどうかは不明。)こうして元老院の計画は台無しになったというのだ。
 ゴルターナ公の居城ゼルテニアに、オヴェリアを連れたディリータが姿を現した。ディリータは公の重臣の一人グルワンヌ大臣がラーグ公に取り入ろうとして、王女誘拐を画策しゴルターナ公に嫌疑をかけることで王都ルザリアへの上洛を妨げ、摂政の位を与えないようにしたと、大臣を王女誘拐の首謀者に仕立て上げた。ディリータは大臣を殺害、更に大臣の謀り事の責任をゴルターナ公にとらせようという動きが出る前に、南天騎士団を率いての王都ルザリア上洛を進言。王子・王妃の排斥、そしてオヴェリアの即位を主張した。
 この功績によりディリータは黒羊騎士団団長に就任。一方、ラムザによってライオネル城の城主であり、ルカヴィに転生していたドラクロワ枢機卿は殺害された。死因は圧死であったがルカヴィの存在を知らぬ者達によって公式発表では病死とされた。
 王都ルザリアへの上洛を果たしたゴルターナ公は、王妃ルーヴェリアを王女誘拐の首謀者としてベスラへ幽閉し、オヴェリアを即位させた。対するラーグ公もオリナスこそが正統の王位継承者であるとして即位させると同時に自分は後見人として摂政の座についた。王妃救出のためにオリナス王子を総大将とした北天騎士団をベスラへ派遣。ゴルターナ公もオヴェリアを総大将とした南天騎士団を派遣。黒獅子を紋章とするゴルターナ公と白獅子を紋章とするラーグ公。ここに畏国を二分する大乱“獅子戦争”が始まった。

■Chapter3 The Valiant偽らざる者
 グロフォビアの戦い(ルザリアとランベリーの境界に位置する平原で行われた両軍の第1回目の全面衝突)より3ヵ月。これまでの両軍の死傷者は約40万。五十年戦争では肩を並べて戦った不敗の騎士団同士の戦いは、いずれも被害を大きくするだけで決着はついていない。早くも膠着状態に陥ったと分析する者も多く、長引きそうな戦乱の気配に民衆の間では厭世気分が漂っている。
 また十数年に一度の大凶作が畏国を襲った。畏国の東側に位置するゼルテニア領とランベリー領では干ばつによる被害が甚大で、収穫量は通年の約半分。逆に水害に苦しむのは西側のガリオンヌ領とフォボハム領。こちらの収穫量も約半分といったところ。戦禍によって家を失った者たちと凶作によって食料を求める者たち、これらの難民が王都ルザリアに大量に流入している。
 戦線の拡大とともに戦闘は日増しに激化し、戦局は決定づけられぬまま、ラーグ・ゴルターナ両軍とも次第に疲弊を重ねつつあった。
 飢えと重税にあえぐ民衆を憂う南天騎士団の将“雷神シド”ことオルランドゥ伯は、ゴルターナ公に和平工作を進言するが受けいれられることはなかった。
 王都ルザリアで次兄ザルバッグに再会し、戦乱を裏で操る者の存在を説くラムザ。しかしザルバッグはその言葉に耳を貸さず、王女誘拐に関する長兄ダイスダーグの不正を告発する弟を、逆に厳しく非難する。そこへ南天騎士団の“雷神シド”がドグーラ峠を突破したとの報が入った。
 ルザリア城裏門で異端審問官ザルモゥを退けたラムザは“異端者”の宣告を受ける。教会に不審を抱くラムザ。再会した妹アルマから聖石『ヴァルゴ』がオーボンヌ修道院にあることを聞かされるが、“異端者”の身では修道院に入れない。止むを得ずアルマを伴うこととなった。オーボンヌ修道院はすでに聖石を求める者たちの襲撃を受けていた。地下書庫に倒れていた神学者シモンは、戦乱の陰で聖石による“ゾディアックブレイブ”伝説の復活を狙うグレバドス教会・教皇フューネラルの謀略を告白する。
 ふたつの聖石と負傷したシモンをアルマに託しラムザは襲撃者の跡を追った。しかし聖石『ヴァルゴ』を奪った神殿騎士団にアルマまでも連れ去られる。“力”を欲し騎士団の一員となっていたウィーグラフは死の間際、聖石『アリエス』と契約を結び伝説のルカヴィ・魔人ベリアスへと転生、姿を消す。神学者シモンは幻の書『ゲルモニーク聖典』をラムザに手渡し、息を引き取った…。
 この頃、味方からは“銀の貴公子”と、敵からは”銀髪鬼”と恐れられたエルムドア侯爵がフス平原の戦いで流れ矢にあたり死亡した。侯爵といえば領民からの信望も厚く、敬虔(けいけん)なグレバドス教信者でもあったことから、その戦死を悲しむ弔問客が侯爵の墓石を絶え間なく訪れている。
 ゲルモニーク聖典を持つラムザの前にバリンテン大公の命を受けたマラークが現れる。アルマを人質としてゲルモニーク聖典をリオファネス城に持ってくることを要求し、その場を立ち去る。
 リオファネス城へ向かうラムザ達が城塞都市ヤードーで救出した少女・天道士ラファは、戦乱に乗じ畏国王の座を狙うフォボハム領主・バリンテン大公の野心と非道を語った。
 しかし、未だ大公に服従を誓うラファの兄・天冥士マラークはアルマの身柄と引き替えにラファとラムザの出頭を要求する。
 リオファネス城執務室に神殿騎士団を迎えたバリンテン大公は取引を持ちかける。神殿騎士イズルードから強奪した聖石『タウロス』と『スコーピオ』、そして『ゲルモニーク聖典』の所在を武器に、教会の後ろ盾を得ようというのだ。だが、ヴォルマルフは大公の申し出を断ると、その無礼な言いぐさに怒りをあらわにしルカヴィに転生する。
 リオファネス城に監禁されたアルマ。突如、静寂を打ち破る悲鳴。驚くアルマの前に現れたリオファネス軍騎士は、恐怖に怯える言葉を残し絶命する。騎士の冥福を祈ったアルマは恐る恐る扉の外へ足を踏み出した。リオファネス城内の惨劇に言葉を失うアルマ。執務室でアルマは臨終の神殿騎士イズルードから聖石『パイシーズ』を受け取る。そこへ現れたヴォルマルフがアルマに迫った時聖石『ヴァルゴ』が激しく輝きだす。それを見たヴォルマルフは、抵抗するアルマを何処かへと連れ去った。
 一人屋上に逃れた大公は、復讐に現れたラファを庇って飛び出したマラークを射殺。聖石『スコーピオ』を奪おうとしたが背後から戦死したはずのエルムドア侯爵と共に現れたレディに投げ捨てられ墜落死した。ラムザ達と侯爵は戦闘となるもこれを退ける。
 兄の遺骸を前に泣き崩れる天道士ラファの胸で聖石『スコーピオ』が光を放つ。神殿騎士ウィーグラフ転生の記憶に、ルカヴィ出現の危険を予感するラムザ。
 しかし聖石の輝きはルカヴィを召喚することなく、マラークの魂を地上に呼び戻した。リオファネス城内にアルマの姿はなく、惨劇の執務室には聖石『パイシーズ』だけが残されたいた。「聖石の力は、それを使う者の心次第…」マラークがつぶやく。拾い上げた聖石を握りしめ、ラムザは妹アルマを想う。
■Chapter4 Somebody to Love愛にすてべを
 畏国全土に拡大した戦乱は新たな局面を迎えようとしていた。
 長く続く膠着状態に業を煮やしたラーグ軍がついに動き出した。前線を構成する騎士団の8割を北天騎士団の配下に加え、一斉にベスラ要塞を目指して進軍を開始したのである。ベスラは対ゼルテニア侵攻には欠かせない重要な拠点。ここを落とすことはランベリーの豊富な食料を独占することになる。つまり、ここを落とせばラーグ公が、守りきればゴルターナ公が勝つことになるのだ。
 早期決着の動きは教会の策略であり、決着がつく前にゴルターナ公とラーグ公、オルランドゥ伯、北天騎士団の聖騎士ザルバッグ、ダイスダーグ卿といった指導者を殺害し、和平せざるを得ない状況を作ろうとしていた。そして教会が伝説のゾディアックブレイブを利用し、人心を掴み、両陣営の“仲介者”となって五十年戦争により低下した教会の支配力を復活させ、国王以上の権力を教会の手に取り戻そうという思惑があった。
 連れ去られたアルマの手がかりを求めマラークの話を聞く中で、神殿騎士団団長・ヴォルマルフの名が浮上する。教皇フューネラルの思惑すら、ヴォルマルフに利用されているらしい。ヴォルマルフの正体とその真の狙いを突き止めるべく、かつての親友ディリータのいるゼルテニアを目指す。
 前線よりゼルテニア城に帰還したオルランドゥ伯をオーランが出迎えた。オーランは畏国各地で起きた聖石をめぐる一連の事件、そして教会および神殿騎士団の動向を義父に報告する。懐中から取りだした聖石『リーブラ』を見つめオルランドゥ伯は来るべき戦いを予感する。ゼルテニアの教会でディリータと接触。教皇は教会の支配力を絶対のものとするため、ラーグ・ゴルターナ両公の暗殺を計画していた。そして王子・王女のどちらかを王位に即位させ傀儡政権にすることが教皇の野望であった。ディリータの行動の真意を問うラムザ。ディリータは教会への従属を否定し、オヴェリアへの想いをラムザに打ち明けた。
 北天騎士団がベスラ要塞への進軍を開始。
 両軍の衝突の回避するため、オルランドゥ伯を追ってラムザはベスラへと急いだ。ベスラ要塞に到着したオルランドゥ伯を待っていたのは、ゴルターナ公に対する謀反の嫌疑だった。教皇の計略に気付かぬゴルターナ公は、潔白を主張する“雷神シド”の投獄を命じるとディリータに聖騎士の称号と、南天騎士団の指揮権を与えた。 神殿騎士バルクの散布した毒により北天騎士団の騎士たちは次々に倒れ、ダイスダーグ卿とラーグ公までも中毒症状に陥った。
 しかし、介抱に駆けつけた聖騎士ザルバッグの眼前で、ダイスダーグはラーグ公を刺殺する。長兄の所業に動揺するザルバッグに、ダイスダーグはベオルブ家による畏国統治の野望を語った。
 ラムザの機転によりベスラ要塞の水門を解放することで、ラーグ・ゴルターナ両軍の衝突は避けられた。己の野心に盲目となった主君に失望したオルランドゥ伯は、教皇の野望を阻止するためベスラ要塞を脱出してラムザに同行することを決める。
 ただし、シドの息子オーランは、オヴェリア警護のためゼルテニアに戻ることとなった。思いがけぬ戦闘の中断にいらだつゴルターナ公は、南天騎士団に再度の総攻撃を命じた。しかし命を受けたディリータは、ついに臣下の仮面を脱ぎ捨て、ゴルターナ公をその手にかける。
 さらにディリータはオルランドゥ伯の影武者を用意し、「雷神シドによるゴルターナ公暗殺」を偽装した…。指導者を失った両陣営に対し教皇フューネラルは調停を提案したが、両軍は未だに十分な戦力を保持していたため、その提案を断った。結局教会の陰謀は失敗に終わった。
 戦乱の調停のため神殿騎士ローファルがベオルブ邸を訪れる。だが教会への服従を意味するローファルの提案をダイスダーグ卿は言下に退けた。
 逆に教会側に圧力をかけるダイスダーグ卿に、ローファルはバルバネス・ベオルブの死に関してダイスダーグによる毒殺疑惑を匂わせると、聖石『カプリコーン』を献上し去っていった。そしてこの密談を耳にした聖騎士ザルバッグも長兄による実父毒殺を疑い始めた。
 神殿騎士ヴォルマルフはエルムドア侯爵の居城ランベリー城にいた。侯爵はヴォルマルフとの会話の中で「“血塗られた聖天使”の復活」という彼らの究極の目的を口にする。そのために、アルマの身体が必要だというのだ。そこへ届けられるラムザ到着の報。これを迎え討つべく侯爵は階下へと向かった。
 ルカヴィへの変貌を遂げたエルムドア侯爵を破るとともに、弟イズルードの死の真相を知った神殿騎士メリアドールと和解。これまでの戦闘からルカヴィも死を逃れ得ぬ存在であることを悟る。聖石『サジタリウス』を手渡したメリアドールは、別の聖石『カプリコーン』がダイスダーグの手元にあることをラムザに告げた。
 オルランドゥ伯によるゴルターナ公暗殺の共謀者として捕らえられたオーランは、義父の汚名を晴らすべく脱獄、オヴェリアのもとへ参上する。そこへ現れたディリータは、公爵に対する裏切りを非難するオーランに、自らが“英雄”として君臨するためにはすべてを利用すると言い放った。ディリータの言葉にオヴェリアは衝撃を受ける。ディリータが教会を裏切ったときのための死刑執行人であったバウマウフラは、教会を裏切るつもりだと発言するディリータに対し彼女はいつしかディリータの行動や思想に惹かれている自分に気付き、剣を振るうことができなかった。ディリータはバウマウフラを殺害したように見せかけ城外へ逃がす。
 父・バルバネスの墓を調べ、毒殺の証拠となる毒キノコ・モスフングスが生えていたことから長兄による実父殺害を確信、イグーロス城のダイスダーグ卿を強襲。そこに現れたラムザはザルバッグと共にダイスダーグ卿を討つことに成功。しかしダイスダーグ卿は聖石『カプリコーン』によって憤怒の霊帝アドラメレクに転生、聖騎士ザルバッグは殺害される。しかしラムザ達はアドラメレクを破ることに成功。
 ラーグ公・ダイスダーグ卿・ザルバッグ将軍・ゴルターナ公が殺害され、オルランドゥ伯が自決したとされた後、ディリータによってイヴァリース全土平定へ。
 相次いで仲間を失い、さらに聖石の多くまでも奪われたヴォルマルフは、配下の神殿騎士とともに教皇フューネラルを襲撃。聖アジョラが眠ると伝えられる死都ミュロンドへの門が、オーボンヌ修道院の地下書庫にあることを聞き出す。
 神殿騎士たちは命乞いをする教皇を冷酷に始末するとオーボンヌ修道院へ向かった。
 妹アルマを求め聖ミュロンド寺院に駆けつけたラムザは死に瀕した教皇を発見する。介抱に駆け寄るも時すでに遅く、死の淵にあえぐ教皇は神殿騎士団の行方だけを告げ力尽きた。ヴォルマルフ、そして拉致されたアルマの跡を追いラムザもオーボンヌ修道院へと急ぐ。地下書庫から死都ミュロンドに行き、ヴォルマルフ、聖天使アルテマを倒すものの、ラムザ達はアルテマの起こした大爆発に巻き込まれた。
 後にオーランによってラムザ・アルマの姿が確認されているが、その後二人の姿を見た者はいない。
 獅子戦争終結より数ヵ月後、ディリータは王女オヴェリアと結婚し畏国王の座につき、戦禍に覆われた国土も一応の平静を取り戻しつつあった。しかしオヴェリアが誕生日を迎えたある日、オヴェリアは不信からディリータを短剣で刺し、ディリータも刺された短剣でオヴェリアを刺し返す。ディリータは生き残っており正史ではディリータは長く平和な施政を続けたとある。
 オーラン・デュライは自分が見聞きした出来事を五年もの歳月をかけてまとめあげ執筆されたデュライ白書は、翌年の新たな教皇を選出するクレメンス公会議の場で公開されるが真相の暴露を恐れた教会はその場でオーランを逮捕すると“異端者”として火刑に処した。回収されたデュライ白書は400年の間教会の手により隠匿されることに。
 オーランはラムザ・ベオルブこそ真の英雄だったと述懐しており、アラズラムも『ブレイブストーリー』においてラムザの名誉回復を主張している。
 ただ『デュライ白書』『ブレイブストーリー』共にルカヴィについて実際書かれてあったかどうかは不明。
※ラムザ達はミュロンドから生還しており、行方不明扱いとなっている。異端者とされた以上表舞台に出ることはできず名を変え、グレバドス教という巨大組織から逃げ切ることに成功。(脱出には聖石を使って何かしたのではとのこと)。別の土地で冒険を続けたという。
 ラムザやシドはオーランの身に危険が及ぶことを恐れ、接触しなかったと思われる。ゲームシステムの都合上確実に生き残っているラムザ・アルマがEDで登場している。
 ディリータ王のイベント最後の台詞はラムザが生きているからこその台詞で、またディリータもオヴェリアに刺されたが死んではない。
 歴史の表舞台から抹殺されたラムザ達が生きているからこそ名誉を取り戻すためにオーランは行動に出たが結果的に処刑され、その時ラムザ一行はイヴァリースを離れていたため成す術がなかった。
 ラムザ達の本当の名誉回復はアラズラムの時代になってからで、一定の権力を保持したままであるがすでに教会の権威と力は弱体化した事と学問追求の立場が強まったこともあり公開されたデュライ白書はおそらく改竄はなかっただろうとのこと。
正史における獅子戦争
真のゾディアックブレイブストーリー(Return to Ivalice)
 平民王ディリータを陰から支えた「もうひとりの英雄」ラムザ・ベオルブ。デュライ白書においてラムザこそが真の英雄、ゾディアックブレイブその人だと記されている。
 ラムザは理由は不明ながらイヴァリースの国教を司るグレバドス教会の命に背いたことから「異端者」として指名手配され、ベオルブ家はそんな末弟をいない者として扱い、一切の記録からその名を削除した。英雄譚にラムザの兄たちの名前は登場するがラムザ本人が登場しないのはそのためと思われる。
 ラムザは武家の棟梁として名高い名家の出自、ベオルブ家の末弟。
 ベオルブ家のラムザとその使用人として育ったディリータは幼少を共に過ごし、身分を越えた友情を育てた。
 ディリータに人並外れた才能を見出したのか当主バルバネス・ベオルブはラムザと共に士官学校へ通わせたという。
 しかしディリータは妹ティータの死をきっかけにベオルブ家と袂を分かつ。
 その原因となったのはラムザが襲われている剣士アルガスを救出したことにある。
 アルガスは没落貴族の一員として生を受けた己が運命を呪い、その憎しみを平民へと向けた。アルガスは嫉妬からティータを殺害。ディリータはアルガスを憎み、ラムザを責めた。責任を感じたラムザはディリータと距離を置くようになった。こうしてふたりは仲違いをし、以来交わることなく別行動をとり続けた。
 名も無き英雄ラムザはディリータと敵対する者たちをひそかに討ち取り、イヴァリース建国を陰から支え続けた。聖石ドュマの力でルカヴィと化したアルガスにディリータが襲われた時は仲間と共に現れその窮地を救ったという。
 また英雄譚とは違い伝説の12個の「聖石」を集めたのはラムザとされる。
 ラムザと共に冒険し最終的に平民王ディリータに仕えたオーラン・デュライは獅子戦争終結後ラムザとそれにまつわる数々の真実を世に出そうとデュライ白書を記すが異端審問にかけられ火刑書される。
 デュライ白書は当時の宗教界の手により禁書として封印された。
 オーランが書いた草稿の写しと語り継がれているものがデュライ一族に伝わっている。
※聖石カプリコーンが聖石ドゥマと呼ばれ、ゴーグ地下で発見されたFFT本編とは違いサダルファス一族が受け継ぐ財宝となっており、アルガスがそれによって冷血剣のルカヴィとなっている。またアルガスが死んだのもティータ殺害直後ではなくラムザとディリータが別行動をとるようになった後になっている。
※オーランがラムザと共に冒険したとなっているがFFT本編では一度一緒に戦ったのみである。
平民王ディリータの英雄譚(Return to Ivalice)
ゼラモニア紛争(ロード・オブ・ヴァーミリオン Ver3より)
 独立国家だったゼラモニアは約1世紀前、オルダリーア国(鴎国)の侵略により併合され鴎国ゼラモニア州となった。
 ゼラモニア州の民は独立を望み、長年にわたり紛争が続いていたが鴎国は独立阻止のため厳しい粛清を実行し多くの血が流れた。イヴァリース国(畏国)は鴎国の弱体化のために援助していたが、結果的には失敗。しかし鴎国支配に不満を持つゼラモニアの貴族や諸都市らが再度、畏国に介入を求めた結果五十年戦争が勃発。 一時は畏国がゼラモニアを占領するが、長年の戦争の末ゼラモニアは鴎国に奪還、最終的に和平協定により 畏国側は事実上の敗北。この五十年戦争が獅子戦争の原因となり英雄王ディリータが誕生。
 獅子戦争から五年後、ラムザは仲間達共に、ゼラモニアの地で知り合った人達や民の為に戦いに参加すること決める。しかし、ディリータ王がこの紛争に兵を出すという噂が流れていた…
※獅子戦争のED後4年をかけてデュライ白書がまとめられその翌年にデュライ白書が公開されているので時期的にはこのゼラモニア紛争の最中にオーランの処刑がありラムザ・ディリータはゼラモニア紛争に関わっている為結果的に手を出せなかったということだろうか。
※公式ではないがラムザの挨拶のネタでは獅子戦争終結から十数年後イヴァリースは平和となっており、ラムザ達は戦火の傷跡を引きずる者たち、特に孤児達が安心して過ごせるような村を作るつもりの模様

戻る

inserted by FC2 system